みんなの家。
- 作者: 光嶋裕介,内田樹(ゲスト),井上雄彦(ゲスト),山岸剛
- 出版社/メーカー: アルテスパブリッシング
- 発売日: 2012/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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若き建築家が初仕事として住居を建てるまでのお話。
施主は内田樹先生。道場兼自宅を建てられたことは知っていたが、建築家が光嶋さんだったとは知らなかった。こんなに若い建築家(著者は1979年生)に依頼していたとは。
更に著者紹介を見ていると「石山修武に師事」、とある。なんか見たことのある名前だと思ったら坂口恭平が師事していた人物だ。しかも光嶋さんと坂口恭平は年齢が1つしか違わない。
ふと手に取った本から繋がる繋がる。著者や書かれている内容によって世界が繋がる感覚ってたまにあるけけど、これが気持ち良いんだ。
時系列に沿って、また大工やデザイナーなどの職業毎に本は進んでいく。建築の世界は無知だが、読んでいるとその道の一流の方が力を結集して作り上げた建物であることが分かる。
それを成し遂げた大きな要因は光嶋さんの行動力であろう。
この人は修行のため世界中の建築家に手紙を出し、その中の一つに潜り込んでドイツで修業をする。
旅先で気になる建築があれば、近くにその建築家が住んでいることを突き止め、その足で訪問する。
同じように、たまたま見つけた、もしくは昔から仕事をしてみたかった一流の方たちに対して物怖じせず「一緒に仕事をしませんか」と交渉を行う。
何度も言うように建築は分からないのだが、光嶋さんは並みの建築家ではないのだろう。しかしそうだとしても初めて建築を行う建築家が、これまで第一線で活躍されてきた方々に対して仕事のオファーをするのは凄いことだと思う。
読む限りでは光嶋さんは楽しそうに職人たちと交渉し、しかもすんなり受け入れられている。
性格で片付ければそこまで。性格も多分にはあるだろうが、そこまでして行動させるものに光嶋さんが出会った(見つけた)ということも大きいだろう。
年齢もキャリアも離れて、良いものを造るという思いが合えばあっさりとそれは叶ってしまう。活き活きと、自分の仕事を完遂することは楽しい。
自分にはこれだけ思いを持って出来る仕事、物怖じせずに交渉できることはない。
率直に羨ましい。
良い仕事がしたい。顔の見える人々が喜ぶ仕事が。これさえあればあれば何もいらない。