「空き家」が蝕む日本
最近何かとよく聞く空き家問題。
空き家が問題となっているのに住む家が欲しい世代がいる。ホームレスもいる。
家が空いているのに新築の家がまだまだ建っている。
何だかすれ違ってしまっている。
そんな中、空き家バンクとかR不動産とかいった新たな切り口のマッチングに興味津々なのです。繋げる仕事って面白い。
本作は不動産コンサルタントの方が書かれたものであり、不動産業界の慣例と国の政策から空き家問題を解説、終盤は話はエネルギー政策から不動産投資にまで及ぶ。
初心者にはとても分かりやすい内容。次はもっと泥臭い現場レベルのマッチングの話を読んでみたいなあ。
以下、例のごとく気になる部分を引用。
現在年間九〇~一〇〇万戸程度で推移している新築住宅着工のベースを、たとえ六〇万戸に落としたとしても、今年、小学校に入学した子供が三〇歳を少しこえた頃に、三件に一件、三六%が空き家になります。(p9)
いや、新築なんて造っている場合ではない。
貿易赤字とか、森林を大切にとか、エネルギー問題とか、いずれにせよこれまでより少ない資源でやっていかねばならないんだから、新しいものばんばん作るんじゃなくてあるもの大切にしましょうよ、まだ使えるものあるんじゃない、と思ってしまう。おばあちゃん子だからなあ。
空き家の増大が意味するところは、従来型の思考や行動様式の継続に他ならない(p12)
岐路はあったのに思考を変えてこなかったし、これだけ問題となっていても今だに変えていないのかもしれない。
新築を控える理由が空き家問題というのは聞いたことはないのは当然としても、家を持つならとにかく新築ありきの発想が根強いと思う。
中古物件をあえて選好するなんてまだまだ変わった趣味程度の感覚しかないのが一般的だろう。
政策や業界による宣伝はいまだに新築のステータスを押し上げている。
こうした行為が半ば常識化している不動産仲介の世界では、この慣行に嫌気が差し業界を去る人も多く、実は私もその一人です。あとは仕方なくこうした慣行に従う人、理由は、そうしなければこの業界ではやっていけないから。なかには、業界の水に慣れきってしまい疑問すら抱かなくなってしまった人もいます。(p117)
主題とは少しそれるが気になったので。
世間の常識とはそぐわない不動産業界の常識についての記述。
働いている人には3種類いる。気付いてしまって抗う人、気付いているけど耐える人、気付かない人。
会社からすると気付かない人が一番扱いやすいんだろうは思うけど、気付いて抗う人に去られてしまうとより常識からよりずれていく気がする。ここでも多様性を認める度量の議論がある。
「水」「食料」「エネルギー」「雇用」をまかなうことができれば、地方は中央に頼ることなく自立できるのです。(p139)
極論のように見えるがよく考えればその通りだ。
比喩ではなく、国同士でも人同士でも当てはまるんじゃないだろうか。
お金とか工業品とかもあると便利なんだろうけど、もっと水と食料とエネルギーを気にかけよう。